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名古屋のまちづくりや都市開発について考察します。

名駅・栄と並ぶ一大拠点へ 名古屋の副都心・金山駅周辺を考える

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金山駅周辺(Googleマップより)

 金山駅は、JR東海名鉄、地下鉄の3事業者計5路線が乗り入れ、1日約46万人が利用する国内有数のターミナル駅で、中部地方においては名古屋駅に次ぐ規模のものです。

 近年の金山駅は、単に乗換拠点であるだけでなく、中部国際空港と直結するアクセスの良さから、名古屋第2の玄関として存在感を高めつつあります。名古屋市金山駅の拠点性を重視しており、2017年には、駅周辺のまちづくりについての方向性をまとめた「金山駅周辺まちづくり構想」を策定して、駅周辺の賑わい創出に向けた取組みを進める方針を打ち出しました。

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土地利用イメージ(金山駅周辺まちづくり構想より)

 当ブログでも、金山駅周辺地区の発展にはとても期待をしています。

 名古屋ではこれまで、栄が唯一で最大の中心地でしたが、1999年のJRセントラルタワーズ開業以降、相次ぐ超高層ビルの開業により、今では名駅と栄という2つの拠点が切磋琢磨し合う時代となりました。この結果、名古屋の都市としての魅力は総合的に高まり、再開発が遅れていた栄でも、名駅に負けじと意欲的な再開発が行われるようになりました。

 このような経緯から、金山駅周辺に期待したいことはただ1つ。それは、名古屋の副都心として、名駅や栄と肩を並べる拠点性を備えることです。金山駅周辺が名駅や栄にも負けない拠点性を持つことになれば、名古屋という都市の厚みはさらに増し、それぞれの地区が切磋琢磨して魅力を高め合うことにつながるものと考えます。

 それでは、金山駅周辺が名駅や栄と肩を並べる拠点性を持つためには、どんな事業や取組みが必要になるのでしょうか。すでに検討されている事業にも触れながら、当ブログなりの考えをまとめてみました。

駅北口における大規模再開発の実施

 まず最も必要だと考えるのは、金山駅北口に隣接するアスナル金山の大規模再開発です。

 駅北口に隣接するアスナル金山は、2005年に開業した複合商業施設で、現在も金山駅周辺の賑わいの核として機能しています。飲食店や物販店だけでなく、施設内のイベントスペースでは人気アイドルやロックバンドのフリーライブが開催されるなど、駅周辺のイメージアップにも大きく寄与してきました。

 当初、アスナル金山は2020年までの暫定施設として開業しましたが、駅周辺のまちづくりについて検討を進めるため2028年まで存続することとなり、最近では大幅なリニューアルも行われています。

 名古屋市は、金山駅周辺まちづくり構想の中で、アスナル金山がある駅北口については広域避難場所としても活用可能なオープンスペースを中心に、商業施設やバスターミナル、タクシー乗り場などを整備することとしています。

 しかし、当ブログは、アスナル金山のある区画には、金山駅周辺のシンボルとなるような施設で、かつハイグレードな都市機能を併せ持つ複合施設を誘致することが良いと考えます。具体的には、バスターミナルや商業施設、オフィス、ホテルを内包する駅直結の複合型超高層ビルの建設です。

 イメージとしては、2019年11月に開業した渋谷スクランブルスクエア東棟(東京都渋谷区)でしょうか。まさに、駅に直結し、様々な機能を内包したシンボリックで話題性のある施設です。

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渋谷スクランブルスクエア東棟(Wikipediaより)

市民会館(日本特殊陶業市民会館)の再整備

 名古屋市は、老朽化と狭隘化が問題となっている市民会館(日本特殊陶業市民会館)について、隣接する古沢公園への移設を含めた建替えを検討してきました。しかし、その後、現在の市民会館を改築しながら、隣接する古沢公園にも施設を拡張する案が示されたことで、金山駅周辺まちづくり構想にあった、市民会館のある区画に商業施設やオープンスペースを整備するという考え方は白紙になったものと思われます。

新市民会館を中核に/20年度末までに方向性/名古屋市金山駅周辺まちづくり建設通信新聞デジタル(2020-10-28 12面)

 名古屋市住宅都市局は、2020年度末までに金山駅北口地区を対象とした「金山駅周辺まちづくり」の方向性をまとめる。都市整備部まちづくり企画課によると、「金山の拠点性を高めるため、古沢公園と市民会館、アスナル金山のエリアごとにまちづくりを検討する。改築事業を展開する市民会館は『中核施設』として、名古屋の文化芸術の発信・集積地に位置づける予定だ」という。
 市民会館改築事業などを踏まえ、再整備を段階的に進める。17年に策定した「金山駅周辺まちづくり構想」をもとに調査・検討を進め、より具体的な整備の方向性などを示す。現在は「金山地区開発事業化検討調査業務委託」を三菱UFJリサーチ&コンサルティング(MURC)に委託中。履行期間は21年3月22日まで。
 また市民会館の改築に向けて市は市民会館の整備検討懇談会(座長・黒田達朗椙山女学園大現代マネジメント学部教授)を設け、議論を進めている。現市民会館(中区金山1−5)の老朽化などの課題を解消するため、現地と古沢公園(同1−3)などを含む敷地約5200㎡に新施設を建設する。
 21年3月ころに市民会館改築事業の基本構想を策定する。
 現市民会館は改築し大ホール(客席数2000−2200席)、演劇などに対応する第3ホール(800−900席、立ち見で1700−1800人程度)を、古沢公園には中ホール(1300−1500席)を整備する。

 

新市民会館を中核に/20年度末までに方向性/名古屋市の金山駅周辺まちづくり | 建設通信新聞Digital

 理想を言えば、市民会館のある区画は金山駅周辺で最も広い市有地であることから、商業施設やイベントスペースを備えた賑わいの核としての機能を求めたかったところですが、その前提となる古沢公園への市民会館移設は、敷地面積から相当無理があったと思われるので、高品質な劇場機能を確保するためには妥当な判断だったものと思います。

 一方で、市民会館は劇場であり、常時集客や賑わいを生む施設ではありません。そのため、改築する新しい市民会館には、劇場機能だけでなく、イベントの開催が可能なオープンスペースや最低限の商業施設を設けるなどして、金山駅周辺の恒常的な賑わい創出に資する機能を持たせることが重要であると考えます。

 モデルとする施設としては、東京国際フォーラム(東京都千代田区)でしょうか。東京国際フォーラムはコンサートホールや多目的ホールからなるコンベンションホールですが、敷地内にはオープンスペースがあり、そこには飲食店やベンチも設けられています。このため、施設内でイベントが開催されていない日でも多くの人が立ち寄ることのできる施設になっているのが特徴です。

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東京国際フォーラムWikipediaより)

 長距離高速バス専用ターミナル(仮称「バスタ金山」)の整備

 これは金山駅周辺まちづくり構想には含まれていないものですが、名古屋市は、金山駅の線路上に長距離高速バス専用のターミナル(仮称「バスタ金山」)を設置することについて検討しているようです。イメージとしては、新宿駅に開業したバスタ新宿といったところでしょうか。これは2020年6月の市議会本会議で明らかにされたものです。

 現在、名古屋を発着する長距離高速バスの大半は名古屋駅に集中していますが、相次ぐ格安高速バスの参入により、名古屋駅周辺ではバスの発着場所不足が課題となっています。金山駅への長距離高速バス専用のターミナル整備は、長距離高速バスの発着場所を名古屋駅金山駅とに分散させることで、名古屋駅周辺への集中を防ぐ狙いがあるのでしょう。

 現実的な「バスタ金山」の設置位置は、金山駅の構造物やバスの待機・転回スペースなども考慮すると、金山駅直上ではなく、伏見通の西側になるのでしょうか。付近の道路構造も考慮に入れると、設置イメージは次のようなものになると予想しています。

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バスタ金山(仮称)設置イメージ

 このような形で「バスタ金山」を整備した場合、伊勢湾岸自動車道名古屋高速3号大高線・4号東海線を経由して名古屋市内の南方向から進入する高速バスは、名古屋駅に到着するよりも距離と所要時間を短縮できます。乗り場を集約することで利便性も向上することから、バス事業者、利用者双方にとってメリットがある構想と言えそうです。

 ただ、線路上に構造物を建設するという大掛かりな工事が必要になるため、実現に向けた技術的な課題は相当なものと思われます。

 なお、バスタ事業は、バスタ新宿の成功を受け、国土交通省が全国に整備を推進する方針を打ち出したものです。新宿駅に続き、現在は東京都の品川駅、神戸市の三ノ宮駅神戸三宮駅周辺のほか、札幌駅、仙台駅、新潟駅、呉駅、大宮駅、長崎駅でも導入に向けた検討が行われているようです。名古屋市もこれに飛びついた感が否めません。おそらく将来的には国の補助金事業となることを睨んでいるのでしょう。

 とは言え、名古屋駅に集中する長距離高速バスの一部を金山駅に振り向けることには一定の効果が見込めると思いますので、技術的な課題を克服し、実現されることを期待しています。

【国交省】交通結節拠点化「バスタプロジェクト」全国展開へ 官民連携で高速バス乗降場を集約 | 建設通信新聞Digital

最後に

 金山駅で電車を降りると、改札付近の混雑や駅前の賑わいに驚かされます。駅付近の道路にも多くの飲食店が立ち並び、夕方から夜にかけての時間や週末にはたくさんの人が行き交うのが金山駅の特徴です。その賑わいは首都圏の駅前と比べても決して劣っておらず、国内有数のターミナル駅としての風格を感じられます。

 金山駅は、1989年、名鉄金山橋駅の移設とJR東海道線金山駅の開業によって誕生した新しい駅で、その経緯から金山総合駅とも呼ばれます。総合駅となった後の発展は目覚しく、駅の乗降客数の増加に伴って、1999年には駅南口に高さ130mの超高層ビル・金山南ビルが、2005年には駅北口にアスナル金山がそれぞれ開業し、駅周辺の賑わいも増していきました。

 しかしそれ以降、金山駅周辺の開発事業はいったん停滞し、現在に至ります。

 これだけ巨大なターミナル駅でありながら、2020年までの15年間、大規模な再開発が行われることがなかったのは、正直不思議でなりません。その間に名駅は国内屈指の超高層ビル街となり、名駅への対抗から、栄でも最近になって再開発事業の動きが活発になっています。

 複数路線の乗降客数を合計した数字であるとは言え、1日に約46万人が利用する駅というのは、首都圏を除けばそうそうあるものではありません。金山駅周辺の再開発は、それだけの規模を持つ駅周辺でのまちづくりです。

 金山駅は、名古屋駅に次ぐ名古屋第2の玄関口であり、そして名駅、栄に並ぶ名古屋の一大拠点です。ライバルは多い方がいいですし、都市の魅力を厚くする上でも、拠点となる地区の数は多い方がいいでしょう。

 将来、金山駅が名古屋の副都心として目覚しく成長を遂げることを強く期待しています。